Dr.ノンの研究所高齢者×ヨーグルト‐Dr. Non's laboratory‐
健康で充実した
生活を過ごすには
日本は、男性・女性の平均寿命はそれぞれ80.75歳・86.99歳(2015年厚生労働省)で、
世界でも男性は6位、女性1位(2016年世界保健機関)であり、長寿国です。
65歳以上が人口に占める割合は27.3%(2016年総務省統計局)を占めています。
さらに国立社会保障・人口問題研究所によれば、
2040年(2013年3月推計)には65歳以上の人の割合が36.1%になると推定されています。
推定されています。年齢を重ねても自立した生活を過ごすには、
自分が食べる毎日の食事の栄養などについて自分で考えて食材を選び、料理をして、摂取することが重要です。
そのためにも、年齢とともに身体がどのように変化していくかを知り、
それを補うためにはどのような食生活を過ごしたらいいのか、考えてください。
高齢期
平均寿命が延びることが、豊かな生活に繋がるのではなく、健康寿命が延びることが目標です。健康寿命とは、平均寿命から病気や事故などで健康を損ねた年月を差し引いたもので、認知症や寝たきりにならない状態で自立して生活できる期間を意味します。健康で自立して生活できる健康寿命が延びることが目標です。
現在の健康寿命は男性70.42歳、女性73.62歳(2010年厚生労働省)であり、平均寿命との間に10歳から13歳の差があります。
そこで、長く自立した生活ができる人生を目標とした食事について紹介します。
年をとるにつれて体はどのような変化が
生じてくるでしょうか?
- 細胞数の減少
- 骨格筋が減少することで、たんぱく質代謝が低下
- 臓器の重量が減少し、生理機能が低下
- 血清総コレステロール値の増加
- 唾液の分泌の低下
- 脱水症状を起こしやすい
それではこれらのことを予防するための食生活はどうしたらいいでしょうか?
このように、体力は年齢とともに低下をしていきます。食欲も低下しますので、肥満よりも栄養不足による体力の低下の方が問題となります。
その前にあなたの栄養状態を簡単に評価してみましょう。
簡易栄養状態評価表から改変
MNA®
Nestlé
Nutrition Institute
簡易栄養状態評価表
Mini Nutritional Assessment-Short Form
スクリーニング
A 過去3ヶ月間で食欲不振、消化器系の問題、そしゃく・嚥下困難などで食事量が減退しましたか?
B 過去3ヶ月で体重の減少がありましたか?
C 自力で歩けますか?
D 過去3ヶ月間で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか?
E 神経・精神的問題の有無
F1[身長・体重]、F2[ふくらはぎの周囲長]のいずれかを入力してください
〈F1〉BMI(kg/㎡):体重(kg)+身長(m)2
〈F2〉ふくらはぎの周囲長(cm):CC
あなたの栄養状態は
「低栄養のおそれあり」「低栄養」という評価だった人は特に、これから紹介する食事を意識して摂取するようにしてください。
1.たんぱく質食品は不足なく摂取してください。
たんぱく質が不足すると細胞数や骨格筋が減少します。臓器の重さも減少するので、臓器の生理機能も低下します。たんぱく質不足は免疫力も低下し、病気に繋がっていきます。
1)食事摂取基準値で決められている量を必ず摂取しましょう。
食事摂取基準値は18歳以上と同じ量の男性60g・女性50g(1日)が設定されています。
朝・昼・夕の食事だけではなかなか目標とするたんぱく質量を満たすことが困難です。間食で不足するたんぱく質を補いましょう。間食として、ヨーグルトを食べるとたんぱく質量の目標を達成しやすくなります。
これだけのたんぱく質をとるための1日の献立の例を示します。
献立例1
献立名 | 食品名 | 重量 (g) |
たんぱく質 (g) |
|
朝食 | ツナトースト | こむぎ [パン類] 食パン | 50 | 4.7 |
<魚類>(まぐろ類)缶詰 水煮 フレーク ライト | 40 | 6.4 | ||
<牛乳及び乳製品>(チーズ類) プロセスチーズ | 20 | 4.5 | ||
<調味料類>(ドレッシング類)マヨネーズ 卵黄型 | 10 | 0.3 | ||
朝食合計 | 120 | 15.9 | ||
間食 | ヨーグルト | <牛乳及び乳製品>(発酵乳・乳酸菌飲料) ヨーグルト 全脂無糖 |
150 | 5.4 |
間食合計 | 150 | 5.4 | ||
昼食 | チキンオムレツ | 鶏卵 全卵 生 | 40 | 4.9 |
<牛乳及び乳製品>(液状乳類) 普通牛乳 | 10 | 0.3 | ||
<鳥肉類>にわとり [若鶏肉] もも皮つき 生 | 40 | 6.6 | ||
(レタス類) サニーレタス 葉 生 | 8 | 0.1 | ||
<調味料類>(食塩類)食塩 | 0.2 | 0.0 | ||
(植物油脂類) なたね油 | 3 | 0.0 | ||
昼食合計 | 101.2 | 12.0 | ||
夕食 | かれいの煮付け | <魚類>(かれい類) まがれい 生 | 80 | 15.7 |
だいず [豆腐・油揚げ類] 木綿豆腐 | 80 | 5.3 | ||
(砂糖類) 車糖 上白糖 | 9 | 0.0 | ||
<調味料類>(しょうゆ類)こいくちしょうゆ | 18 | 1.4 | ||
<アルコール飲料類>(混成酒類)みりん 本みりん | 18 | 0.1 | ||
<アルコール飲料類>(醸造酒類) 清酒 普通酒 | 15 | 0.1 | ||
夕食合計 | 220 | 22.5 | ||
総合計 | 591.2 | 55.7 |
※ 朝食、昼食、夕食の献立名は主菜のみ記載
献立例1▼タップすると開きます
献立例2
献立名 | 食品名 | 重量 (g) |
たんぱく質 (g) |
|
朝食 | ベーコンエッグ | 鶏卵 全卵 生 | 50 | 6.2 |
<畜肉類>ぶた [ベーコン類] ベーコン | 40 | 5.2 | ||
<調味料類>(食塩類)食塩 | 0.2 | 0.0 | ||
<香辛料類>こしょう 黒 粉 | 0.01 | 0.0 | ||
朝食合計 | 90.21 | 11.3 | ||
間食 | ヨーグルト | <牛乳及び乳製品>(発酵乳・乳酸菌飲料) ヨーグルト 全脂無糖 |
150 | 5.4 |
間食合計 | 150 | 5.4 | ||
昼食 | 冷奴 | だいず [豆腐・油揚げ類] 絹ごし豆腐 | 150 | 7.4 |
(ねぎ類) こねぎ 葉 生 | 1 | 0.0 | ||
<魚類>(まぐろ類) 缶詰 水煮 フレーク ライト | 50 | 8.0 | ||
<魚類>(かつお類) 加工品 かつお節 | 1 | 0.8 | ||
えだまめ 生 | 20 | 2.3 | ||
<調味料類>(しょうゆ類)こいくちしょうゆ | 12 | 0.9 | ||
昼食合計 | 234 | 19.4 | ||
夕食 | ホワイトシチュー | <鳥肉類>にわとり [若鶏肉] もも 皮つき 生 | 50 | 8.3 |
<いも類>じゃがいも 塊茎 生 | 30 | 0.5 | ||
(たまねぎ類) たまねぎ りん茎 生 | 20 | 0.2 | ||
(にんじん類) にんじん 根 皮つき 生 | 20 | 0.1 | ||
マッシュルーム 生 | 15 | 0.4 | ||
<牛乳及び乳製品>(液状乳類) 普通牛乳 | 200 | 6.6 | ||
こむぎ [小麦粉] 薄力粉 1等 | 7 | 0.6 | ||
(マーガリン類) ソフトタイプマーガリン 家庭用 | 4 | 0.0 | ||
<調味料類>(だし類)固形ブイヨン | 2 | 0.1 | ||
<調味料類>(食塩類)食塩 | 0.2 | 0.0 | ||
夕食合計 | 348.2 | 16.9 | ||
総合計 | 822.41 | 53.0 |
※ 朝食、昼食、夕食の献立名は主菜のみ記載
献立例2▼タップすると開きます
献立例3
献立名 | 食品名 | 重量 (g) |
たんぱく質 (g) |
|
朝食 | おからの煮物 | だいず [その他] おから 生 | 50 | 3.1 |
えだまめ 生 | 20 | 2.3 | ||
(にんじん類) にんじん 根 皮つき 生 | 10 | 0.1 | ||
(ねぎ類) 葉ねぎ 葉 生 | 1 | 0.0 | ||
しいたけ 生しいたけ 菌床栽培 生 | 10 | 0.3 | ||
(砂糖類) 車糖 上白糖 | 3 | 0.0 | ||
<調味料類>(しょうゆ類)こいくちしょうゆ | 9 | 0.7 | ||
<アルコール飲料類>(混成酒類)みりん 本みりん | 5 | 0.0 | ||
朝食合計 | 108 | 6.5 | ||
間食 | ヨーグルト | <牛乳及び乳製品>(発酵乳・乳酸菌飲料) ヨーグルト 全脂無糖 |
150 | 5.4 |
間食合計 | 150 | 5.4 | ||
昼食 | たらのヨーグルト煮 | <魚類>(たら類) すけとうだら 生 | 100 | 17.4 |
<牛乳及び乳製品>(発酵乳・乳酸菌飲料) ヨーグルト 全脂無糖 |
150 | 5.4 | ||
<調味料類>(みそ類)豆みそ | 18 | 3.1 | ||
<調味料類>(食塩類)食塩 | 8 | 0.1 | ||
<香辛料類>こしょう 黒 粉 | 0.01 | 0.0 | ||
<アルコール飲料類>(醸造酒類) 清酒 普通酒 | 3 | 0.0 | ||
昼食合計 | 271.21 | 25.9 | ||
夕食 | 鶏のつみれ汁 | <鳥肉類>にわとり [ひき肉] 生 | 100 | 17.5 |
<調味料類>(だし類)かつお・昆布だし | 150 | 0.5 | ||
<調味料類>(食塩類)食塩 | 0.1 | 0.0 | ||
<香辛料類>こしょう 黒 粉 | 0.01 | 0.0 | ||
(かんきつ類) ゆず 果汁 生 | 1 | 0.0 | ||
(ねぎ類) 根深ねぎ 葉 軟白 生 | 20 | 0.3 | ||
夕食合計 | 271.11 | 18.2 | ||
総合計 | 800.32 | 56.0 |
※ 朝食、昼食、夕食の献立名は主菜のみ記載
献立例3▼タップすると開きます
2)植物性食品だけでなく、動物性食品も摂取してください。
たんぱく質はアミノ酸がいくつか集まった栄養素です。アミノ酸の中でも人が体内で十分作ることができないアミノ酸を必須アミノ酸と言い、これは食べ物から摂取する必要があります。
食品のたんぱく質の栄養的な評価は、たんぱく質をどれだけ含んでいるのか、という「量」と、どのようなアミノ酸からできているか、という「質」の両方が関係します。「質がよい」とは、たんぱく質を構成しているアミノ酸が理想的に含まれていることを意味し、「理想」は国際連合食糧農業機関(FAO)、世界保健気候(WHO)、国連大学(UNU)から発表されている値を用います。
この値と食品に含まれるアミノ酸の値を比較し、もっとも低い値をその食材のたんぱく質の質として評価し、これを「アミノ酸スコア」といいます。アミノ酸スコアは100%が質がすぐれているたんぱく質であることを表しています。
「質がよい」たんぱく質食品を表に示します。大豆・大豆製品、肉(牛、豚、鶏)、卵、牛乳・乳製品、魚類が「質がよい」たんぱく質食品です。「質のよい」たんぱく質食品は動物性食品の方が多いのです。
たんぱく質 | アミノ酸スコア |
---|---|
大豆 | 100 |
豆腐 | 100 |
牛肉 | 100 |
ヨーグルト | 100 |
タラ | 100 |
ゴマ | 50 |
落花生 | 65 |
トウモロコシ | 49 |
精白米 | 67 |
小麦 | 53 |
アミノ酸スコアは成人のアミノ酸評点パターン
[FAO/WHO/UNU,2007]より算出
「質がよい」たんぱく質食品とヨーグルトを一緒に使用した料理の紹介をします。
「質がよい」たんぱく質食品とヨーグルトを一緒に用いることで、質のよいたんぱく質を取ることができるだけでなく、他にもいろいろなよいことがあります。
1.ヨーグルトに付けておくと、筋があって少し硬い肉も軟らかくなります。
2.ヨーグルトを加えると、とろみがついて、飲み込みやすくなります。
高齢者にとってみれば、ベストな組み合わせの料理献立です。
3)肉の選び方
脂肪が少ない肉は、加熱すると硬くなってしまうので、適度に脂を含む部位を選びましょう。
牛肉は脂肪の量が多いので加熱しても硬くなりにくいのですが、鶏肉は脂肪の量が少ないので、加熱後は少し硬くなってしまいます。脂肪は少しの量を食べるだけでエネルギーとなるので、食べる量はいつもの半分くらいで十分です。
獣鶏肉類の部位別の
脂肪含量
4)魚の料理法
えび、いか、たこなどの硬いものはすり身にして料理に利用します。
2.骨を丈夫にする食事を
骨粗鬆症は高齢者の女性に多くみられ、骨折の原因となります。予防のためには骨の主成分であるカルシウムを含む食品とカルシウムの吸収を促進するビタミンDを含む食品を取ってください。
食事摂取基準値ではカルシウムは男性700mg・女性650mg(1日)が設定されています。
カルシウムを多く含む食品を以下に示します。ヨーグルトはたんぱく質だけでなく、カルシウムを多く含みます。
ヨーグルトを利用した具体的な献立は、たんぱく質の項目の間食や料理例を参考にしてください。
カルシウムを多く含む食品(常用量)
発酵食品はビタミンDをほとんど含んでいません。発酵食品に含まれるカルシウムを有効に活用するには、カルシウムの吸収を促進するビタミンDを多く含む食品を料理や献立に取り入れるといいでしょう。
カルシウムの吸収を促進するビタミンDを多く含む食品を以下に示します。
カルシウムを骨に定着させるには、適度な運動が有効です。
ビタミンDを多く含む食品(常用量)
3.腸の働きを正常にするためには
高齢期は、歯が悪くなり、咀嚼する力も弱り、胃腸などの消化吸収力が低下するため、軟らかい消化のよい食物繊維が少ないものを食べがちになります。そうすると腸の働きがますます低下していきます。腸にはある程度の刺激が必要であるということと、腸内環境を整えることが必要です。
1)腸にある程度の刺激が必要
腸にある程度の刺激を与えるには、食物繊維が多い食品を軟らかく煮るなどして食べてください。腸は刺激により水分の吸収を促進するので、便は軟らかくなり、量も増えて便通がよくなります。
長期にわたる便秘は慢性化となり、大腸がんを誘発する原因にもなります。
食事摂取基準値では食物繊維は男性20g以上・女性18g以上(1日)が設定されています。
食物繊維は穀類、いも類、豆類、野菜類に多く含まれます。食物繊維を多く含む食品を以下に示します。
2)腸内環境を整える
腸内の善玉菌を増やすにはヨーグルトや甘酒などの発酵食品が有効です。妊婦のところでも説明しましたが、善玉菌が増えると免疫力の向上やコレステロール抑制など健康に効果があります。善玉菌を増やすには善玉菌のエサとなる食物繊維を含む食品をヨーグルトと一緒に食べることが有効であり、便秘を防ぐことができます。
発酵食品としては以下のようなものがあります。
甘酒
ヨーグルト
味噌
酢
納豆
チーズ
発酵食品と食物繊維を組み合わせることで善玉菌が一層増加して、より腸内環境が整います。
これにより免疫力がつくことで病気になりにくく、胃潰瘍や胃がんの原因となるピロリ菌を抑制したり、花粉症を誘発する原因であるアレルギー抗体を抑制したり、便秘の改善につながります。
発酵食品と食物繊維を組み合わせた料理例を以下に示します。
発酵食品と食物繊維を多く含む食品を組み合わせた料理例
発酵食品のひとつである甘酒の栄養については、「妊娠期」の「コラム 甘酒」を参考にしてください。
加齢とともに、体力や代謝機能が低下していきます。その低下を抑制するには、私達の身体を作っている細胞,血液、筋肉、消化液などは主としてたんぱく質からできているので、積極的に肉、魚、卵、大豆製品などのたんぱく質食品の摂取が必要です。しかし、年齢とともに栄養素の消化・吸収能力が低下していきます。そのための対策として
1.食べる量が減少するため、朝・昼・夕だけではたんぱく質量を満たすことができにくくなります。そこで、間食としてたんぱく質を含み、発酵食品であるため、消化・吸収がよいヨーグルトを摂取することで、たんぱく質を補うことができます。
2.ヨーグルトなどの発酵食品は腸内環境を整え、免疫力の向上やコレステロール抑制の効果があります。腸内環境を整えることで、栄養素の消化・吸収を正常にし、病気になりにくいという効果が期待できます。
ライフステージごとの
ヨーグルトの活用
監修 中部大学応用生物学部食品栄養科学科 教授 小川 宣子
協力 中部大学食品栄養科学科管理栄養科学専攻学生 後藤 匠