Dr.ノンの研究所妊娠期×ヨーグルト‐Dr. Non's laboratory‐
子どもの健康は
妊婦の食生活から
子どもの嗜好性は母親の食生活の影響を受けます。
妊婦が甘いものを過剰に摂取する食生活を過ごすと、生まれてきた子どもは甘いものを好み、
塩辛いものを好みがちなら、子どもは塩味が濃いものを好むようになります。
この子ども頃の嗜好性が成人になるまで食生活の習慣として続くなら、
成人になってから生活習慣病や高血圧を発症する可能性が大きくなります。
妊娠期に必要な栄養
妊娠期間が進むにつれて胎児が成長するために必要なエネルギーやたんぱく質を増やしていくようにします。カルシウムは胎児の骨の形成、鉄は造血に必要な栄養素です。
出産時の出血による血液の損失に備えて、血液を作るために必要な鉄を出産が近くなるにつれて意識的に摂取するようにしましょう。
成人女性 | 妊娠初期 (16週未満) | 妊娠中期 (16~28週未満) | 妊娠後期 (28週以降) | |
---|---|---|---|---|
エネルギー(kcal)注 | 1950 | 2000 | 2200 | 2400 |
たんぱく質(g)注2 | 50 | 50 | 60 | 75 |
カルシウム(g)注2 | 650 | 650 | 650 | 650 |
鉄(mg)注2 | 6.0 | 8.5 | 21.0 | 21.0 |
食物繊維(g)注3 | 18以上 | 18以上 | 18以上 | 18以上 |
ビタミンK(mg)注4 | 150 | 150 | 150 | 150 |
※ 年齢は18~29歳女性、身体活動レベルⅡ。
注…推定エネルギー必要量 注2…推奨量
注3…目標量 注4…目安量
- 成人女性
- 妊娠に備え、食事摂取基準を満たすバランスのとれた栄養素の摂取が必要です。20歳代女子はやせ願望が強いのでダイエットをしがちですが、1日3食を規則正しく摂取し、たんぱく質やビタミンやミネラル(カルシウム・鉄など)が不足しないようにしてください。
- 妊娠初期(16週未満)
- つわりの時期です。食欲がないために、食事の量が減少したり、嘔吐で水分が失われ、脱水症状が生じることもあります。胎児のための栄養はまだ必要ないので、母体に必要な栄養や水分をとるようにしましょう。つわりがおさまった後は、食べ過ぎによる肥満に気を付けてください。
- 妊娠中期(16~28週未満)
- 妊娠期では比較的安定している時期です。胎児の成長のためにたんぱく質、血液の増加のために鉄を積極的に摂取してください。
- 妊娠後期(28週以降)
- 胎児の成長が急速な時期です。目標とする栄養素を摂取するように心がけましょう。しかし、子宮が大きくなって胃が圧迫され、満腹感を感じるので、食事の回数を増やして、食事を少量ずつ食べるようにしましょう。また、妊娠高血圧症候群の発症を予防するためには塩分の過剰摂取に気をつけて、休養をとるようにしましょう。
この栄養の値を基準にして、妊娠期の食生活は以下のことに気をつけてください。
甘いものの取りすぎに
気をつけましょう
妊婦の甘すぎるものを多く摂取すると、
将来、甘いものを好みがちな子供になります。
胎児が口からとる栄養素は羊水であり、その羊水のグルコース(甘味)の濃度は、妊婦の食事の影響を受けます。これが子供の嗜好形成の第一歩となるので、糖分をとりすぎないように。
甘いものを取りすぎると食事摂取基準値に定められたエネルギーより過剰摂取になります。
朝食、昼食、夕食のエネルギーはほぼ同じ位で、間食は総エネルギーの10%を目安にします。
そうすると、朝食・昼食・夕食はそれぞれ600~720kcalで、間食からは200~240kcalのエネルギーを摂取するのが理想です。
200~240kcal以下の間食としては、牛乳・乳製品(無糖)、甘酒、果物が適しています。
たんぱく質は不足しないように
妊婦は胎児の成育や血液を作るために、成人より多くたんぱく質を摂取する必要があります。
一般の人に比べて、妊娠中期、後期の方は10g~25gのたんぱく質を多く取るのが望ましい食生活になります。
ヨーグルトを毎日1個、間食で食べることで、付加しなければならないたんぱく質の摂取を補うことができます。
年齢は18~29歳女性、身体活動レベルⅡ。数値は推奨量
妊娠期の摂取基準値 | 妊娠初期 (16週未満) | 妊娠中期 (16~28週未満) | 妊娠後期 (28週以降) |
---|---|---|---|
たんぱく質(g) | 50 | 60 | 75 |
血液の一部である赤血球のヘモグロビンを増やすにはヘモグロビンの成分である鉄も必要です。
ビタミンCや葉酸も鉄と一緒に摂取するとヘモグロビンの合成が促進します。
胎児の栄養は母親の胎盤を通して行われます。多くの毛細血管からなる胎盤は妊娠中期に完成します。胎児のため、胎盤形成のため、母体の赤血球増加のために造血が必要であり、そのためには血液の一部であるヘモグロ分の成分である鉄が必要となります。
年齢は18~29歳女性、身体活動レベルⅡ。数値は推奨量
妊娠期の摂取基準値 | 妊娠初期 (16週未満) | 妊娠中期 (16~28週未満) | 妊娠後期 (28週以降) |
---|---|---|---|
鉄(mg) | 8.5 | 21.0 | 21.0 |
年齢は18~29歳女性、身体活動レベルⅡ。数値は推奨量
妊娠期の摂取基準値 | 妊娠初期 (16週未満) | 妊娠中期 (16~28週未満) | 妊娠後期 (28週以降) |
---|---|---|---|
ビタミンC(mg) | 8.5 | 21.0 | 21.0 |
年齢は18~29歳女性、身体活動レベルⅡ。数値は推奨量
妊娠期の摂取基準値 | 妊娠初期 (16週未満) | 妊娠中期 (16~28週未満) | 妊娠後期 (28週以降) |
---|---|---|---|
葉酸(μg) | 480 | 480 | 480 |
出産時の出血に備え、
ビタミンKを摂取しましょう。
ビタミンKは血液を早く凝固させる働きがあります。出産時による出血を凝固により止血するために、血液凝固作用があるビタミンKが不足しないように妊娠前から蓄積するように心がけましょう。
年齢は18~29歳女性、身体活動レベルⅡ。数値は推奨量
妊娠期の摂取基準値 | 妊娠初期 (16週未満) | 妊娠中期 (16~28週未満) | 妊娠後期 (28週以降) |
---|---|---|---|
ビタミンK(mg) | 150 | 150 | 150 |
妊娠期は便秘になりがちなので、
腸の蠕動運動を促進するために
食物繊維をとりましょう。
妊娠期は腸の蠕動運動がさかんではありません。
蠕動運動を盛んにするにはヨーグルトが有効です。なぜなら、ヨーグルトには腸内の善玉菌を増やし、免疫力向上やコレステロール抑制、腸内環境を整えるなどの働きがあるので、この善玉菌を増加させると健康に効果があるのです。
そのためには善玉菌のエサとなる食物繊維を含む食品をヨーグルトと一緒に食べると善玉菌が増え、便秘を改善することができます。
年齢は18~29歳女性、身体活動レベルⅡ。数値は推奨量
妊娠期の摂取基準値 | 妊娠初期 (16週未満) | 妊娠中期 (16~28週未満) | 妊娠後期 (28週以降) |
---|---|---|---|
食物繊維(g) | 18以上 | 18以上 | 18以上 |
つわりの時の食事の注意
-
手軽に食べることができるものを
少量ずつとりましょう -
- ご飯ならおにぎりや巻き寿司
- サンドイッチ
- ひやむぎ
- そうめん
-
肉や魚はさっぱりとした
調理法にしてみてください -
- 冷しゃぶ
- マリネ
- 刺身
- 酢の物
- 酸味の味付けをして見ましょう
-
レモン、みかん、ゆず、すだちなどを
酢の物やヨーグルトに加える
- 冷たいものなら食べやすいです
-
- 牛乳
- ヨーグルト
- 冷やし茶碗蒸し
- 卵豆腐
- アイスクリーム
- 水分の多いものを食べる
-
- 牛乳
- ヨーグルト
- ミルクセーキ
- 野菜スープ
- 甘酒
コラム 甘酒
甘酒には麹菌の作用で米のでんぷんがエネルギー源となるブドウ糖(グルコース)や、米のたんぱく質が体にとって欠かすことができない必須アミノ酸類に分解され、存在しています。また、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸、ビオチンなどのビタミン類も多く含まれています。
食欲がない時には、甘酒を飲むとエネルギー源となり、代謝も促進され、体力もついていきます。夏には冷たくして飲んでください。
江戸時代には甘酒は庶民にとって総合栄養ドリンク剤の役割を果たしていました。
「甘酒は夏バテに効く」と言われ、夏にもよく飲まれ、甘酒売りが夏の風物詩にもなっていました。
エネルギー(kcal) | ブドウ糖(g) | ビタミンB1(mg) | ビタミンB2(mg) | ビタミンB6(mg) | パントテン酸(mg) | ビオチン(μg) | |
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甘 酒(100cc) | 81 | 18.3 | 0.01 | 0.03 | 0.02 | 8 | 0 |
コーラ(100cc) | 46 | 12.2 | 0 | 0 | – | – | – |
ブドウ糖について、
甘酒は炭水化物の値を使用、
コーラは単糖当量を使用
―:未測定
胎児の発育・母体の変化と食生活
日本栄養士会からは胎児の発育・母体の変化と食生活について報告されているものを以下に示します。
妊娠前半はつわりのため食欲のないことが多いので、食事は食欲がでて、食べやすいように酸味のあるもの、水分の多いもの、冷たい物、香辛料をきかせるような工夫をします。
妊娠後半は子宮が大きくなって胃を圧迫するため、食事は4~5回くらいに分けて少量ずつ食べてください。出産に向けて、造血や出血を抑えるために鉄やビタミンKを積極的にとるようにしましょう。
妊娠期 | 妊娠初期(16週未満) | 妊娠中期(16週~28週未満) | 妊娠後期(28週以降) |
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胎児の発育 |
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母体の変化 |
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食生活 |
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厚生労働省から妊産婦の目標とする
食生活が公表されています。
思春期の女性には極端なやせ願望の傾向がみられますが、食生活の乱れから、無理なダイエットは貧血、月経不順、摂食障害から健康障害が生じます。
妊娠したから食生活や健康に気を付けるのではなく、妊娠前から「妊産婦のための食生活指針」に書かれているような食生活を過ごす食習慣が、母子ともに健康な出産につながります。
多様化する生活スタイルの中で、妊婦は自分をとりまく社会環境・個人的な環境を理解して、自分にあった食生活を考えて見ましょう。
妊産婦のための
食生活指針
(厚生労働省2006)
- 妊娠前から、健康なからだづくりを
- 「主食」を中心に、エネルギーをしっかりと
- 不足しがちなビタミン・ミネラルを、「副菜」でたっぷりと
- からだづくりの基礎となる「主菜」は適量を
- 牛乳・乳製品などの多様な食品を組み合わせて、カルシウムを十分に
- 妊娠中の体重増加は、お母さんと赤ちゃんにとって望ましい量に
- 母乳育児も、バランスのよい食生活のなかで
- たばことお酒の害から赤ちゃんを守りましょう
- お母さんと赤ちゃんの健やかな毎日は、からだと心にゆとりのある生活から生まれます
ライフステージごとの
ヨーグルトの活用
監修 中部大学応用生物学部食品栄養科学科 教授 小川 宣子
協力 中部大学食品栄養科学科管理栄養科学専攻学生 後藤 匠