Dr.ノンの研究所栄養×ヨーグルト‐Dr. Non's laboratory‐
知ってる?
ヨーグルトのすごい栄養
ヨーグルトは牛乳に乳酸菌または酵母を加えて発酵させた発酵乳です。
そのため牛乳とは栄養成分が異なり、加える乳酸菌の種類によりさまざまな特徴のヨーグルトができてきます。
このようなヨーグルトの栄養的な性質を、生活の中で有効な活用方法を考えていきたいと思います。
栄養成分について
食材に含まれる栄養成分は文部科学科学技術・学術審議会資源調査分科会により検討され、「日本食品標準成分表」として公表されています。
食品の栄養成分は100gあたりのエネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ミネラル、無機質、ビタミン、脂肪酸、コレステロール、食物繊維、食塩相当量が示されています。厚生労働省からは健康維持・増進、生活習慣病予防を目的として「日本人の食事摂取基準」が公表されているので、エネルギーや栄養素の1日の摂取量は献立を作る上で参考にしたいですね。
体力回復・高血圧対策に
ヨーグルトが有効的?
たんぱく質は人間の体を作るために必要な栄養素です。
1日あたり成長期には65g、成人では50~60gが必要とされ、高齢になっても摂取すべきたんぱく質の量は成人と同量です。
たんぱく質を多く含む食品として代表的なものは、肉、魚、卵、大豆製品ですが、脂質・無機質の栄養バランスを考え牛乳や乳製品(ヨーグルト、チーズなど)も取り入れるのが理想的です。そのため栄養士は健康な人の献立を考える時、必ず牛乳や乳製品を1日およそ200g摂取するよう設定しています。
たんぱく質はアミノ酸から構成されおり、アミノ酸が結合したものをペプチドといい、ペプチドがさらに集まったものがたんぱく質です。
ヨーグルトは牛乳に含まれるたんぱく質の一部が、乳酸菌によってペプチドやアミノ酸に分解されています。
ペプチドやアミノ酸はたんぱく質に比べ吸収もよく、鉄などの無機質の吸収をたすけたり、血圧を抑制する効果があることが報告されています。
体力が落ち、消化吸収能力が低下している場合には、牛乳をそのまま飲むよりたんぱく質がペプチドやアミノ酸に分解されているヨーグルトがベターです。
ストレス・病み上がり時は
ヨーグルトでエネルギー
チャージ
脂質というと「腹持ちがいい」と言われるように、消化があまりよくない栄養素です。
また、取り過ぎが気になる栄養素でもあり、嫌われがちですが、エネルギーを得るために必要な栄養素でもあります。
ヨーグルトの脂質は脂肪球の構造が小さいため、ヨーグルトのたんぱく質と同じく消化吸収がよいのです。
消化吸収能力が弱い幼児や高齢者、ストレスがたまっている方、病気の回復期の方などには少量のヨーグルトの摂取でエネルギーを蓄えることができます。
ヨーグルトはなんで
おなかがゴロゴロしないの?
牛乳に含まれる主な炭水化物は乳糖です。乳糖は腸内環境を整え、カルシウムやマグネシウムの吸収を助ける役割があります。
しかし、日本人には牛乳を飲むと下痢を起こしやすい、「乳糖不耐症」の方が10%くらいいます。
欧米人は先祖が遊牧民で日常的に牛乳を摂取していたため、乳糖を分解する酵素「ラクターゼ」を多く持っている人がほとんどですが、日本人は牛乳を飲むという風習が江戸時代末期からと遅かったため、ラクターゼが少ない人が多いのです。
その点、ヨーグルトなら乳糖の一部(20~30%)が乳酸になっているため、乳糖不耐症の人でも牛乳に比べて下痢は起こりにくいのです。
不足しがち?
ヨーグルトで補うカルシウム!
牛乳や乳製品はカルシウム、カリウムを多く含みます。ヨーグルト100gにカルシウム120mg、カリウム170mg含有しています。
成人の摂取の目標量はカルシウム600mg、カリウム2600~3000mgなので、ヨーグルトはカルシウムやカリウムを摂取するために重要な食べ物なのです。
日本人は古くからカルシウムを摂取するのに海藻や小魚を食べていましたが、近年食生活の洋風化からこれらの食べ物の摂取量が減り、カルシウム不足になりがちです。
牛乳や乳製品に含まれるカルシウムの吸収率は40%で、小魚の33%、野菜の19%に比べ、非常に高い吸収率です。これは牛乳のたんぱく質や乳糖がカルシウム等の吸収を助ける役割があるからだとされています。
カリウムは余分なナトリウムを体外に出して高血圧を予防したり、腸の動きをよくし消化を助けたりする役割をはたしています。
ヨーグルトにはカルシウムやカリウムの他に、マグネシウム・リン・ナトリウムなどの無機質が豊富に含まれています。ヨーグルトに含まれるたんぱく質は、体内でこれらの無機質と結合しやすく、無機質の吸収を促進するという特性を持っています。
ヨーグルトで代謝促進!
実はビタミンたっぷり!!
牛乳や乳製品(ヨーグルト)はビタミンCの含量は少ないですが、粘膜を丈夫にするビタミンA、赤血球の合成に関わっているビタミンB12、カルシウムの吸収を促すビタミンDなどほとんどのビタミンが含まれています。
特に脂質代謝の促進や皮膚などの修復に関わるビタミンB2は、ヨーグルト100gに0.14mg含まれ、成人の摂取の目標量1.2~1.6mgを摂取するためにオススメな食材です。
豊富な栄養、
だけどうれしい低カロリー
ヨーグルトの栄養素のバランスはいずれも量・質ともに優れています。ところがヨーグルト1個(100g)のエネルギー量は62kcalと水分が多く含まれているため、多くの栄養素を含みますが、カロリーは少ないのです。カロリーが少ないので、ヨーグルトを1個食べても満足感が得られます。
ヨーグルトは毎日摂取することができる食べ物ですので、献立を考えるときはぜひ加えてほしいものです。
特に、たんぱく質、脂質、炭水化物は消化性に優れているため、幼児のように消化能力が低い人、ストレスで食欲が減退した人、高齢者のように消化能力が低下した人にとって、効率よく栄養を吸収できる食べ物なのです。
ヨーグルトの
乳酸菌について
ヨーグルトに存在する乳酸菌は、体内でさまざまな効果を発揮することが報告されています。腸内環境を整える効果を「プロバイオティクス」といい、パッケージに標記されているものもあります。乳酸菌により腸内環境を整え、腸内細菌のバランスを保つためには1か月から半年くらいは継続して摂取する必要があります。
乳酸菌のカラダにイイ効果
◎免疫維持(向上)
体内に存在するウィルスや異物に対して反応する免疫細胞としてNK(ナチュラルキラー)細胞やマクロファージがあります。免疫細胞の働きが活発であれば、病気を引き起こしにくいことになります。乳酸菌は免疫細胞の働きを活発にすることが報告されており、病気の感染を防御する効果があります。
◎花粉症の抑制
L-92株とKW乳酸菌の2種類の乳酸菌は腸内に存在する免疫細胞との関わりから発症すると言われている花粉症の予防や症状の抑制に効果があることが臨床実験により報告されています。これは乳酸菌がアレルギー抗体であるIgEを抑制し、アレルギーを抑制するIgA抗体を増加するためです。
◎ピロリ菌の抑制
乳酸菌の一種であるラクトバシルスは胃潰瘍や胃がんの原因となるピロリ菌の働きを抑制する働きがあります。
◎便秘改善
腸の蠕動運動により便を押し出しますが、乳酸菌は消化内容物を分解して乳酸を生産するため腸内が酸性になり、腸内活動を活発にすることができ、便秘の改善を図ることができます。
ライフステージごとの
ヨーグルトの活用
監修 中部大学応用生物学部食品栄養科学科 教授 小川 宣子
協力 中部大学食品栄養科学科管理栄養科学専攻学生 後藤 匠