米こうじができるまで
米こうじは蒸した米にこうじ菌を繁殖させたものです。 こうじ菌が繁殖する時に出す酵素が甘酒や塩こうじなどを発酵させるときに必要です。良い米こうじを作るには、こうじ菌が繁殖しやすい温度と湿度、水分をいかに整えてやるかがポイントです。 ナカコの純米こうじは、職人が技術や経験に基づき、昔ながらの製法にこだわって作った逸品です。
1.お米を蒸す
米の内部まで水分が通った米を使います。水分が多すぎるとこうじ菌が米の表面だけで繁殖してしまい、内部に爆ぜこまなくなるため、加減を見極めて吸水時間をコントロールします。水を抜いた直後の米は自重で底の部分が固まっているため一旦全体をほぐし、蒸しムラにならないようにします。
なぜお米を炊かずに蒸すのか?
水分は麹菌の繁殖に欠かせないものですが、麹菌は水分を求めて米の内側に食い込んでいく時に最もたくさんの酵素を出します。 ですので、米糀に使う米は外硬内軟といって内側に水分を保持し、表面をできるだけ乾燥させ麹菌が内側に向かって進みやすい状態を作ります。 米を炊いてしまうとベタベタするくらい表面に水分が回ってしまいますので、米の表面だけで麹菌が繁殖してしまい、見た目にはよく菌が付いているように見えますが酵素力の低い糀になってしまのです。 また水分が多すぎると空気中の雑菌も呼び込みやすくなってしまいます。
蒸気が下から吹き抜け易いようにと、中心部を少しだけ凹まします。どの程度効果があるか分かりませんが、半分は上手に蒸し上がりますようにとのゲン担ぎで行っています。
蒸気は釜の下から出て上に吹き抜けます。ここに時間がかかりすぎると上部と底部で蒸しムラが出るため、蒸気が全体を通り抜けるまでの間は最大出力で一気に蒸気を吐き出します。蒸気が米全体になじんだ後は出力を絞り、ゆるやかに蒸していきます。蒸し時間は、職人がその日の気温や湿度から長年の経験に基づき決めます。
2.こうじ菌の種付け
蒸しあがった直後の米は高温のため完全殺菌状態ですが、釜から出した直後から温度が下がるため空気中の雑菌が寄り付いてきます。雑菌が生える前にこうじ菌を振りかけてやるため、急いでこうじ室へ運び込みます。こうじ室に米を運び込んだ後は、送風機で一気に冷やします。米が冷めてくると空気中の雑菌も繁殖しやすくなるため、こうじ菌が死なないギリギリの温度まで下がり次第、菌の種付けを始めます。
米を薄く広げ、できるだけたくさんの表面に菌が降りかかるようにします。菌を振り終わった後は手早く混ぜ込んで全体になじませます。蒸し上がりから種付け終了までの間は、いつも時間との戦いになります。
3.切り返し・手入れ
種付けが終わって2~3時間経過すると、最初の切り返しを行います。蒸しあがった直後の米は若干べとついていますのでほぐれにくいですが少し時間をおいて乾燥してくるとパラパラになってきます。このタイミングでしっかりと混ぜ込むことで、全体にこうじ菌を行き渡らせます。
種付け後、8時間くらいするとこうじ菌の発芽が始まり、更に8時間くらいすると旺盛に繁殖するとともに発熱が始まります。放置しておくと自分で出した熱でこうじ菌が死滅するほど高温になるため、菌糸が伸びて固まった米を丁寧に砕き、送風機で風を送りながら冷やしてやります。途中経過を見ながら2回ほど手入れを行います。
4.出こうじ
ある程度までこうじ菌が繁殖すると、発酵に必要な酵素が貯まってきます。必要以上にこうじ菌を繁殖させると米を食べ過ぎてしまうため、ある程度の見極めでこうじを冷やし、繁殖を抑えながら米の水分を飛ばしてやります。 この工程をフリーズドライのように冷凍乾燥で一気に行うところもあれば、当店のように常温で送風しながら、ゆっくりと水分を抜くところもあります。当店では手間と時間がかかりますが、最終製品における米の味にこだわり米の構造を維持したまま乾燥できる方法を選んでいます。
米を食べ過ぎると何がいけないのか?
米こうじは麹菌の出した酵素を使って米を分解し甘みを出します。 米を食べさせ過ぎると酵素ばかり増えて肝心の分解する米がなくなってしまうからです。 (甘酒の場合おかゆ等を半量混ぜますが、残りの半分は米こうじ由来の米であるため)
出こうじ直前のこうじは菌糸が伸びて板状のブロックなっているため、お客さまが使いやすいようにバラバラに砕きます。