発酵食とは‐The fermented food‐
近年、塩麹・しょうゆ麹ブームをきっかけに、みそや納豆、ヨーグルトといった発酵食が見直されています。発酵食が与えてくれる健康効果や美味しさの秘密。自分で作る手づくり発酵食ならではのポイントをご紹介します。
「発酵食品」とはどんなもの?
食品が発酵すると、うまみが増しておいしくなり、保存性が高まって、しかも体にもよい効果があります。 また昔ながらの調味料や食品であっても、今、私たちが食べている洋風や中華風、エスニックなテイストの料理にもよくなじみます。 ここでは、塩麹、しょうゆ麹、西京みそ、甘酒、ヨーグルトなど、様々な発酵食についてご紹介します。 おいしくて、ヘルシーな手づくりの発酵食品を、毎日の食卓で気軽に楽しみましょう。
微生物の働きが、豊かなうまみや、栄養成分をつくり出す
私たちの身近にある伝統食材の中には、「発酵」というプロセスを経てつくられるものが数多くあります。塩麹、しょうゆ麹をはじめ、酢、みそ、しょうゆ、納豆、漬物、清酒、甘酒、チーズ、ヨーグルト……。意外なところでは、かつおぶしや紅茶なども発酵食品です。
発酵の主役は、おなじみの乳酸菌や納豆菌、麹菌、酵母菌といった微生物(菌)。これらの微生物が食材に付着して、その食材に含まれる成分を分解し、自らの栄養としたり、新しい産物をつくり出します。たんぱく質はアミノ酸やペプチドに、糖質は乳酸やアルコールに、といった具合です。その過程で、健康に役立つ成分がぐんと増え、さらにうまみや風味が増し、保存性も高まるのです。
ところが食材の種類や、温度などの環境条件によっては、食べられないものに変わってしまうこともあります。これが「腐敗」です。発酵と腐敗は、人間にとって役に立つかどうかの違いといえます。
造り酒屋の軒先に吊された杉玉。新酒ができた時の緑の杉玉が、酒が熟成するとともに枯れて茶色になります。
各地の気候風土や原料事情に合わせて受け継がれてきた発酵食品
発酵食品は、体験的に体によいことが知られ、古くから世界各地で伝承されてきました。
たとえばヨーグルトのはじまりは、紀元前5000~6000年頃とされます。東地中海地域で家畜として飼われていた牛や羊の乳を食料に用い始めたとき、偶然に乳酸菌が混入し、自然発酵して、ヨーグルトの原形である発酵乳が誕生したのではないかといわれています。
日本でも縄文・弥生時代には、発酵を利用した干物やなれずしが作られていたようです。さらに遺唐使が奈良・平安時代に中国に渡り、みそ、酢、酒、醤ひしお、漬物のはじまりを日本にもたらしたとされています。
以来、これらの発酵食品は、日本人の食生活の中で大切に育まれ、それぞれの地域で、気候風土や原料事情、好みに合わせて、さまざまな特色を持つ「ふるさとの味」としてつくられるようになりました。
腐敗を防いで、保存に適した状態へと変化させ、さらには豊かなうまみや風味を加える――。
発酵食品は、人々の食生活を支えてきました。近年、研究が進んで、さまざまな健康効果があることが立証されています。
発酵食品は、まさに“生きた健康食”。食べ続けることで、その健康効果を発揮します。しかも手づくりなら無添加で、食材も自分で選べるから安心です。
毎日の食卓に取り入れて、気軽に発酵食品を楽しみましょう。
みそやしょうゆ、清酒などの材料になる米麹は蒸した米に麹菌を繁殖させたもの。麹菌にとっての適温を維持するための微妙な温度管理が麹づくりの勝負どころです。
発酵食、
カラダに良い5つの理由
免疫力を高める
体の免疫機能の実に60%は腸に集中しています。体に侵入してくる病原菌や有害物質などの異物から体を守るために、多くの免疫防御システムが備わっています。この腸を元気にすることが、免疫力を高め、体全体の健康を保つ近道。発酵食品に含まれる乳酸菌は、糖を分解して乳酸をつくり出す細菌の総称です。腸内を弱酸性に保って悪玉菌を駆逐、善玉菌を優勢にします。納豆菌にも、腸内で善玉菌を増やす働きがあることがわかっています。
また、麹も乳酸菌を含むほか、多くの酵素による発酵過程ででんぷんをオリゴ糖にも変えるため、腸内細菌の状態を善玉菌優勢にしてくれます。
アンチエイジング効果
体のサビともいわれる老化の原因・活性酸素。麹菌がでんぷんを糖に分解する途中でできるコウジ酸には、この活性酸素の働きを抑え、細胞を活性化させるアンチエイジング効果があるといわれます。また、納豆やみそなど、大豆を原料とする発酵食品に含まれているポリアミンという抗酸化成分には、動脈硬化の抑制効果があるとの研究報告があります。
発酵過程そのものが抗酸化作用を強めることも、わかってきました。もとの食品に含まれているビタミンCやカロテン、カテキン、フラボノイドといった抗酸化物質は、発酵によってさまざまな酵素が働くことで、効率よく抽出され、非常に強い抗酸化作用を発揮するようになるといわれています。
体によい成分が増える
食品が発酵すると、栄養素やその機能が、微生物の働きで変化します。たとえば納豆は納豆菌の働きによって、独自の成分・ナットウキナーゼが生まれます。ナットウキナーゼは、血液の流れをよくし、血栓を溶かす働きで知られます。また、ヨーグルトは、酵素の働きによって、牛乳に比べてカルシウムが体内で吸収しやすい形に変化しています。このほかにも、発酵の過程で、微生物は抗生物質や免疫物質を産生したり、アミノ酸やクエン酸、ビタミン類などの成分を合成するため、結果的に食品の栄養価が高められています。
生活習慣病を防ぐ
発酵の過程でたんぱく質が分解されると、ペプチドが生成されます。ペプチドはたんぱく質とアミノ酸の中間物質で、アミノ酸が数個連なったもの。とくに大豆ペプチドは、血圧降下、抗酸化、コレステロール低下など、生活習慣病の予防に役立つ、さまざまな生理的機能を持つことがわかっています。
保存性が高まる
発酵食品は長期保存できるものが多く、保存食として生み出されたものも少なくありません。発酵食品に含まれる善玉菌は、腐敗の原因となる悪玉菌の働きを抑える役割や、発酵によって生まれた成分そのものが殺菌作用を持つことも。このため、生の状態よりも長期間の保存が可能になり、さらには「熟成」という、うまみを増す効果も期待できます。
安心・安全、
美味しい発酵食
非常に体に好影響を与え、味や保存性を高めるにも有効な発酵食ですが、家庭で手作りする自家製発酵食は市販のものに比べ、さらに良いポイントがあります。
家庭で手作りする場合、無添加で食材も自分で選べるため、小さなお子さんがいる家庭でも安心して食べることが出来ます。また、新鮮な牛乳で作ったヨーグルトが美味しいのはもちろんの事、食品を発酵する過程で増すうまみ成分により、様々な料理が驚くほど美味しくなります。
手軽に無理なく
手作り発酵食
「手作り発酵食の良さは分かったけど、実際に作るのは大変なんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、発酵器を使った手作り発酵食はとても簡単です。 材料を入れて温度とタイマーをセットするだけで、短時間で失敗なく発酵食がつくれます。例えばヨーグルトを作る場合、実作業時間はたったの5分です。後は自動で発酵器が作ってくれます。
ヨーグルティアSやKAMOSICOでは、設定温度が25~65度と幅広く、1台で何種類もの発酵食がつくれるのも魅力です。
様々な発酵食があります
ヨーグルト
ヨーグルトは、古くから世界各地で食べられている発酵食品。長寿村として知られている土地では、ヨーグルトなどの発酵乳を常食しているところが多いといわれます。
ヨーグルトの健康効果でもっとも有名なのが、「おなかの調子を整える」働きです。乳酸菌が乳糖やブドウ糖を分解し、酸をつくります。この酸が腸を刺激して蠕動運動を活発にし、便通を促します。さらに腸内を弱酸性にするため、腐敗菌や食中毒菌といった“悪玉菌”の繁殖が抑えられて腸内環境が良好になり、結果的に免疫力が向上します。
体にとって有益で、毎日食べたいヨーグルト。そのままでもおいしく食べられますが、肉や魚をやわらかくしたり、魚のくさみを消したり、素材のうまみを引き出すなどの働きもあります。ふだんの料理にも賢く取り入れて、ヨーグルトの持つ力を生かしましょう。
4つの乳酸菌を含むABCT種菌を使ったヨーグルト。毎日食べるなら、手作りヨーグルトがいちばんです。
甘酒
甘酒には、酒粕を溶いてつくるタイプもありますが、ここでつくるのは米麹でつくる甘酒。アルコール度数を含まず、とても自然でサラリとした甘みがあります。飲み物として楽しむほかに、砂糖やみりんに代わる調味料として活用することができます。
麹の持つ発酵パワーは、甘酒になっても健在です。たんぱく質やでんぷんを分解する酵素の働きによって、食材をやわらかく、ひとさじ加えるだけでも、うまみや甘みをぐっと引き出します。甘酒自身の栄養価も高く、ビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、パントテン酸などのビタミンB群やオリゴ糖、システインやアルギニンなどの必須アミノ酸、ブドウ糖も豊富。「飲む点滴」、「飲む美容液」といわれるほどです。
塩麹に比べれば日持ちしませんが、できあがったらすぐに冷凍すれば、約3か月保存できます。こうじから作る甘酒はアルコール度数0%です。
できあがりは、ほんのり黄色みを帯び、甘みが出る。自然でやさしい甘みは、調味料としても活用できます。
塩こうじ
素材をやわらかくし、うまみ成分を増やしてくれる塩味の発酵調味料・塩麹。材料は、麹と塩、水だけ。これを合わせて発酵させます。
塩麹を使うことで、肉はやわらかくジューシーに、魚介類はしっとり、プリプリの食感に。野菜類はうまみ、甘みが引き立ち、歯ざわりがよくなります。
塩気がおだやかで角がなく、発酵による深い味わいと風味があるので、ほかにいろいろな調味料を使わなくても味が決まり、満足感も得られます。その結果、塩分や糖分、油脂をひかえることにつながり、料理がぐっとヘルシーに。
麹の持つ健康パワーも注目されています。老化の原因・活性酸素を押さえる抗酸化作用をはじめ、腸内環境の改善、疲労回復を促すほか、高血圧や肥満の防止、生活習慣病の予防にも役立つことがわかっています。
ヨーグルティアSを使えば、たった6 時間でできあがります。冷蔵庫で保存している間も熟成されて味がまろやかに。
醤油こうじ
しょうゆ麹は、塩麹の塩をしょうゆに代えてつくった調味料。しょうゆは大豆や小麦由来のうまみを豊富に含む発酵調味料なので、うまみ、塩味、甘み、酸味、苦みをバランスよく含みます。このしょうゆと、米由来の麹を合わせて発酵させたしょうゆ麹のグルタミン酸含有量は、塩麹の10 ~15倍といわれます。
塩麹同様にしょうゆ麹も、麹の働きによって食材をやわらかく、食材のくさみを消してうまみや甘みを引き出し、保存性を高めるなどの作用があります。
健康パワーも見逃せません。アンチエイジングや疲労回復、便秘解消、ストレス軽減など、さまざまな効果が期待できます。
塩麹に負けず劣らず、使い勝手は抜群。和食にはもちろんのこと、洋風にも中華風にも手軽に使え、しょうゆの代わりにそのまま豆腐や刺身にかけても、おいしくいただけます。
しょうゆと麹、発酵食材のW効果でうまみたっぷり、もろみのような深い味わいで、しょうゆと同様に使ます。
パン(天然酵母)
いつも一定の味に焼ける製パン用のイーストに比べて、天然酵母は発酵に手間も時間もかかります。それでも、小麦粉本来の風味や香味、うまみを味わえるのが、天然酵母パンの魅力。果物や穀類から酵母を起こすのは大変ですが、乾燥粉末状の天然酵母で生種をつくり、こだわりのパンづくりを楽しむ方も増えています。
安定した発酵力のある生種をつくるには、酵母にとって適正な温度を保つことが必要です。季節や天候に左右されないように、温度を一定に保つ専用培養器もあるほどです。専用の培養器がなくても、醸壺を使えば生種づくりもかんたん。酵母パン種の種類によって異なる適正温度にも対応できます。
ヨーグルティアSなら天然酵母の生種が手軽につくれます。
納豆
納豆は、大豆に納豆菌を作用させた日本の伝統的な発酵食品。原料の大豆は植物性たんぱく質をはじめ、ビタミンやミネラル、食物繊維も豊富で、“ 天然のマルチサプリメント”と呼ばれるほど。さらに納豆は、発酵の過程を経て、たんぱく質の一部がアミノ酸に分解され、消化吸収のよい形になっています。
特有の成分・ナットウキナーゼは納豆菌の作用でつくられる酵素で、血栓を溶かし、血液をサラサラにすることでよく知られています。納豆菌は生命力が強く、生きたまま腸に届いて善玉菌として働くため、腸内環境の改善にも効果大。
多くの生活習慣病を予防してくれる成分をたっぷり含んだ納豆は、毎日の食卓に積極的に取り入れたい健康食品です。手作りなら、発酵時間を調節したり、好みの品種の大豆を選ぶことで、発酵の度合いや風味の違いも楽しめます。
大豆の味が濃いできあがり。小粒の豆は“ 種” の市販品。大豆や黒豆など、好みの豆で作れて、豆本来の味がする手作り納豆が楽しめます。
白味噌(西京味噌)
みそは、日本が誇る伝統的な発酵調味料のひとつ。みそ汁は、日本人にとってのソウルフードといえ、発酵による深い味わいや豊かなうまみ、大豆由来の健康成分をあますことなく取り入れることができます。
さらに、みそは食材の下ごしらえに使うと抜群のパワーを発揮します。「西京漬け」は、その代表。西京みそとみりん、酒を合わせたみそ床に食材を漬けると、肉はやわらか、魚はふっくら。低塩甘口、まろやかな西京みその風味が楽しめます。
みそに含まれるたんぱく質分解酵素が、肉や魚の筋組織を分断してやわらかく。たんぱく質は、一部が分解されてアミノ酸に変化するため、うまみもアップします。
醸壺でつくった西京みそは、西京漬けをはじめとする料理にも、みそ汁にも活用できます。冬はこっくりとした白みそ仕立てのみそ汁に、夏は赤みそを加えて合わせみそにしても、おいしくいただけます。
ゆでた大豆に米麹と塩、水を加えて8時間。大豆の風味を生かした手作り無添加みそのできあがり。
他にもこんな発酵食があります
- ・キムチ
- ・イカの塩辛
- ・ピクルス
- ・サワークラウト
- ・メンマ
- ・ナンプラー
- ・かつお節
- ・アンチョビ
- ・サラミ、ペパロ二
- ・チーズ
- ・発酵バター
- ・サワークリーム
- ・ナタデココ
- ・ウーロン茶、紅茶
- ・日本酒
- ・ワイン
- ・ビール
- ・マッコリ
- ・黒酢
- など
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タニカブログ
タニカ電器では皆様の発酵ライフを応援する為に、ヨーグルティアSやKAMOSICOを毎日の生活で使用している様子を綴っています。ブロガーのハルさんとカオリさんが、日々様々な発酵食・発酵レシピにチャレンジし、時に面白く時に奮闘しながらブログを更新しています。営業部からの近況報告記事もアップいたしますので、皆様にこのブログを通じてよりタニカ電器を身近に感じていただけたらと思います。
発酵食試作報告書
タニカ電器がこれまでにヨーグルティアSを使用して作った発酵食を、試作報告書としてまとめました。成功したものも失敗したものもありますので、皆様の発酵食作りの参考にしていただきたいと思います。また、リクエストも募集しておりますので、フォームよりお気軽にご提案ください。
※試作報告書は完成を保証するものではなく、試作時の環境下で作成した結果です。ご参考になれば幸いです。